樋口英明氏Zoom講演会 「私が大飯原発を止めた理由」

8月3日 19:00 Zoom講演会
樋口氏講演会.jpg

<はじめに>

2014年5月21日、判決。
私は原告・被告のどちらにも厳しい態度で臨みました。
そのため、原告側は私がどう判決するか、分かっていなかったでしょう。

一方、被告は勝てないことが分かっていました。
私が「人格権」で判断する姿勢を見せていたからです。
原発が危険なら止める。
原発が危険でなければ止めない。
判断基準が「危険」かどうかできめるのであれば、負けるのは当たり前でした。

私は当たり前の裁判をしただけです。


<「危険性」には二つの意味>

①被害の大きさ

②事故発生確率

被害の大きさとは、お母さんが子供に「自転車で行くならヘルメットをかぶって!」と言うケースです。

一方、事故発生確率とは、お母さんが子供に「そこの道は危険だよ」と言うケースです。

火力発電所は石油を使っているので、爆発すれば大きな被害があります。
しかし、原発は、広島原爆の1000倍になるため、毒性は石油に対してけた外れに高いものになります。
①被害の大きさという「危険性」にあてはまります。

火力発電所は地震が起こったら火を消さなければなりません。
しかし、原発は核分裂を止めて終わりではありません。
沸騰は続きますので、水で冷やし続けなければなりません。

水で冷やすために電力が必要になりますが、鉄塔が倒れてしまえば外部電源は失われます。
また、津波によって非常用電源も失われました。

普通の家が地震にあった場合、家が大丈夫なら、
停電や断水があっても、家が壊れることはありません。
原発は地震で無事であっても、停電があっても、断水があっても危険です。

このことから、②事故発生確率という「危険性」もあることがわかります。


<安全三原則>
止める・・・制御棒で止める
冷やす・・・水で冷やし続ける
閉じ込める・・・格納容器の中に閉じ込め続ける。

☆2号機の奇跡
家庭用圧力釜は蒸気穴に野菜カスが溜まると事故が起きます。
2号機は設計基準の倍を超える圧力になっていました。
ベントとは、高まった圧力を抜くことです。
中の蒸気を抜くと放射能が出ます。
そんな危険なことをなぜ決断しなければならなかったかといえば、
放置すると、全部が出る可能性があったからです。
ところが、電気がきていないためベントが出来ませんでした。
3月15日吉田所長はあきらめてしまい、東日本は壊滅すると考えました。
ところが、格納容器の底の部分で圧力が抜けてしまいました。
つまり、穴が開いたということです。
2号機は欠陥機であったため、圧力が抜けて大爆発を免れたのです。

☆4号機の奇跡
4号機は、貯蔵プールの水があたたまってきました。
エネルギーが落ちているのですぐは大丈夫だが、4~5日たつとメルトダウンの可能性がありました。
当時、シュラウドの入れ替え作業が行われていました。
そのためか、仕切りがずれ、メルトダウンを免れることができたのです。

<「被害の大きさ」における原発の危険性>
①奇跡が重なって15万人の避難となった。
②奇跡がなければ、4000万人が避難しなければならなかった。(=東日本壊滅)

<「事故発生確率」からみる原発の危険性>
被害の大きさと、事故発生確率は反比例の法則があります。
例えば、新幹線と在来線なら、新幹線の方が安全に作られている。
大型旅客機とセスナ機では、大型旅客機の方が安全。
大型旅客船と漁船では、大型旅客船の方が安全。
被害の大きくなるものは、安全に作ってあります。
これは当たり前のことです。

地震の強さは震度1から7で表されます。大きさはマグニチュード。
 震度4   40~110ガル
 震度5弱  110~240ガル
 震度5強  240~520ガル
 震度6弱  520~830ガル
 震度6強  830~1500ガル
 震度7   1500ガル以上
震度7より上はありません。

1995年阪神淡路大震災以降、地震の強さが分かるように、各地に地震計が設置されました。

2000年以降の主な地震(単位:ガル)
  703ガル (伊豆半島・2009年・M5.1)
  806ガル (大阪府北部・2018年・M5.1)

 1300ガル (栃木県北部・2013年・M6.3)
 1494ガル (鳥取県中部・2016年・M6.6)
 1571ガル (宮城県沖・2003年・M7.1 )
 1584ガル (鳥取県西部・2000年・M7.3)
 1740ガル (熊本・2016年・M7.3 )
 1796ガル (北海道・2018年・M6.7)

 2515ガル (新潟県中越・2004年・M6.8)
 2993ガル (東日本大震災・2011年・M9)

 4022ガル (岩手宮城内陸地震・2008・M7.2)

大飯原発は当初405ガルで設計されていました。
それが、3・11当時は700ガルに、2018年3月時点では856ガルになっています。
700ガルは安全でしょうか?
856ガルは安全でしょうか?

実は、原発はハウスメーカーの耐震性よりはるかに低いのです。
巨大地震の問題ではなく、普通の地震でも近くで起きれば危なくなります。
危険なものほど安全に作らなければならない、という法則を無視しているのです。
原発は被害が大きく、事故発生確率も高い。(まさにパーフェクトの危険)

<原発容認派の反論>
地震の強さを並べて比較してはいけない。
理由:原発の設計は地下の揺れを基準とするのに対し、地震計は地表の揺れを基準としている(これは正しい)
   地表の揺れは地下よりもはるかに大きい(これは誤り)
   実際は、地表の揺れと地下の揺れはほとんど変わらないか。逆に地下の方が揺れが大きい。
中越沖地震において
  地表は約500ガル~1000ガル
  地下で約1700ガル

<原発容認派の苦しい弁解>
強振動予測・・・原発敷地に限っては、将来にわたって震度6や震度7の地震は来ません。
これは科学に反します。
「予測のレベルは未だ研究段階にあり、普遍的に社会で活用できる域に達しているとは言い切れない」
(武村雅之氏「強振動に期待される活断層研究」より引用)
研究段階にあるものを原発だけに使っているはおかしい。

<700ガルが来れば原発は危うくなるが、なぜ、多くの裁判長は原発を止められないのか>
☆以下を知らない
 ①700ガル以上の地震が過去に何回起きたか。
 ②700ガルは震度6なのか7なのか
 ③700ガルの地震が来ても一般の建物は倒れない

☆弁護士も裁判官も、前例に倣い、
 「原子力規制委員会の独立性が高いか、原発の施設や敷地が規制基準に合致しているか」
 等に関心を払い、実際に起きている地震に比べ、原発の耐震性が高いのか低いのかを重視していない
     ↓
  原発の真の危険性について審理していない

※伊方最高裁判決(1992年)
1.原発は高度の専門技術訴訟であり、
2.裁判所は原発の安全性を直接判断するのではなく、判断基準の合理性を判断すればよく
3.その判断は最新の科学技術知見による
樋口先生・・・700ガル以上かどうかは、専門技術を必要としない。
 専門技術ではなく、理性の問題。
 判決は一般論として正しいが、その解釈は間違っている。
 原発事故は過去の基準が間違っていることを示している。
 その間違った規制基準に照らして、判断することはおかしい。

<これからの裁判の在り方>
◆従前の裁判の状況=専門技術訴訟という土俵
◆これからの裁判=理性と良識という土俵


<感想>
樋口氏の説明は、分かりやすく、ストンと頭に入りました。
当たり前のことを、当たり前だと言う難しさは未だに感じてはいますが、樋口氏のような裁判官がいらっしゃることを心強く感じました。
また、知らないこともたくさんありました。
2号機、4号機の奇跡のために偶然、東日本壊滅を免れたこと。
原発の耐震基準が住宅メーカーの基準より甘いなんて、驚き以外の何物でもありません。
原発推進派の強振動予測がこれほどお粗末な内容だったとびっくりしました。
「専門技術訴訟」という土俵に上げられてしまわないためには、
私たちが正しい知識を得ることが重要だとも感じました。
大勢が正しい知識を持っていれば、「専門技術」という誤魔化しの罠に追い込まれることはなくなります。
裁判官の方々が理性と良識という土俵に上がれるためには、
私たちが理解できる程度の知識は学んでいくんだという強い意志が不可欠だと思います。

質問コーナーでの最高裁に行ける人についての説明にもショックを受けました。
「裁判官として25歳で着任し、65歳で定年を迎えるとすると40年間あるわけだけれど、
20年以上裁判をやっている人は最高裁には行けない。
裁判をやっていない人が最高裁に行ける。
そのため、最高裁のレベルが落ちている。
司法試験だったら落ちているレベルの人もいる。」
結局、行政の言いなりになる養成期間を経た人が最高裁の裁判官になるのだと思いました。

質問コーナーでも樋口氏は
「争点は裁判所が決める。」「当事者が決めるものではない」と、
司法の専門家としてのあるべき立ち位置をはっきり述べられ、
その強い信念は私も見習わなければならないと、改めて感じました。

Zoomは初めて使うので、ドキドキでしたが、
家に居ながら講演会を聞けるのも悪くないと思いました。

<出演者物販紹介>
「原発に挑んだ裁判官」磯村健太郎・山口英二著 (朝日文庫出版)
「ノーニューックスで生きる権利ー原発メーカー訴訟から新しい社会へ」島 昭宏 著
 CD「KNOW YOUR RIGHTS」

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント