「R帝国」を読んで

中村文則著の「R帝国」は、戦争の本質を良く描き出した本だと思います。

人は、なぜ、戦争を止められないのか?

以下、第二部、作品中の登場人物「鈴木タミラ」の著述より引用抜粋しました。

 『この世界が幸福に満ちた建造物だったとする。
 みなが幸福だが、しかし地下に虐げられたたった一人の少女がいて、
 その幸福の建造物が、
 実はそのたった一人の少女の犠牲に成り立っていることがわかった時、
 その幸福の建造物を認めるべきかどうか』
 
 鈴木タミラはここから独自の解釈を始める。
 この例題で現わされた世界を、右派も拒否するだろうと。
 なぜなら、そのたった一人の少女の犠牲はより具体的で、
 姿が見え過ぎ、
 それを是とする感覚は右派にもないだろうと。
 鈴木タミラは書いている。

 『でもその少女の数が一億人だったらどうだろう?
 被害の数が多いほど悪は増えるのに、
 対象はあいまいになっていく逆転の現象が起こる。』


そういう考え方はしたことがなかったので、新鮮であり、
また、私にもあてはまるのだと、ショックを感じました。

見えるものに対しては、誠実で優しくあっても、
見えないもの、隠されているものによって
自分の生活が構成されていても、
それを知らず知らず蓋をしてしまっていると感じました。

その私を含めた大多数の人間の弱さが利用されている、とも。

R帝国の総理は石油を手に入れる目的で、
テロを利用し、R帝国の国民を犠牲にします。
これは作中の総理の言葉です。
我々は、国民達から常に支持されていなければならないのだよ。
我々は何かを企画するとき、だからそれを国民が支持するように仕向ける」


国民の弱さ、自分勝手さを最大限に利用し、
自分たちが偉大になったかのように錯覚させ、
戦争へと自らの意志で突き進ませる、
こうしたやり方は、第二次世界大戦でも同じでした。

そして、まさかの、まさか、
現代はまた、同じ轍を踏もうとしています。

日本は度重なる大災害と福島事故、
海外に基盤を置くことにより、中小企業が弱体化。
大企業の崩壊寸前のあり様、銀行さえ、弱体化してしまい、
人々は現実逃避をしたくて、現実のひどさを受け入れないのではないかと、
私は考えていました。

この小説は、もちろん、創作の世界に存在します。
でも、その端々に、国民の愚かさを利用した政治政策が描かれています。

小説のストーリーと現実の仕組みの2つが絡み合い、
一読をお勧めできる本だと私は思っています。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック